
ヘモグロビンA1cの研究を通して、 個々の患者さんに合った血糖マネジメントを実現。
共同研究で得た臨床データをもとに、 糖尿病の治療につながる研究に没頭。
HbA1c(ヘモグロビンA1c) は糖尿病の検査や治療に用いられている、世界的にスタンダードな指標です。血糖値が一時的な値であるのに対し、HbA1cは2~3か月間の血液中の糖の状態を表すことができるため、患者さんが日頃から血糖を管理できているか判断できます。私はこのHbA1cの研究に長年携わってきました。不思議なことに同じ血糖値でもHbA1cの値が高い人と低い人がいるので、HbA1cを基準に血糖値を下げる治療を行うと、人によっては低血糖を起こしてしまうことがあります。血糖値と差が生まれる原因を突き止め、それぞれの患者さんに合った血糖マネジメントを提案することが現在の目標です。また、私は国内の1型糖尿病患者に関する多施設共同研究に10年以上参加しています。この疾病は国内において患者さんの絶対数が少ないため、複数の研究機関がデータを共有して研究成果を発信することで、ようやく海外の研究機関と肩を並べられます。データの整合性を確認したり、傾向を探り臨床に生かしたりするとともに、患者さんのデータから疾病の遺伝的要因を探る研究にも取り組んでいます。
糖代謝に関する幅広い知識を生かし 低身長症の子どもが持つリスクを予見。
もう1つ、昔から研究を続けているのがSGA (Small for Gestational Age) 性低身長症です。同じ性別・在胎週数の新生児と比較して身長や体重が小さな子どもをSGA児と呼びます。多くの場合は成長とともに標準的な体格になりますが、1割の子どもは低身長のまま育ち、生活習慣病のリスクを抱えると言われています。また、彼らには成長ホルモン剤を打つことが許可されていますが、治療によって血糖値の上昇などの影響を及ぼす可能性が示唆されています。私の研究は、この影響を具体的に解明することを目的としています。リスクを予見できるようになれば、HbA1cの研究と同じく多くの患者さんの健康管理に貢献できるはずです。
正確な血糖値に基づいた医療を提供し、生涯を通して患者さんの健康を支える。
今後の目標は、患者さん一人ひとりに合った血糖マネジメントの提案とともに、 疾病の予防や症状の軽減につなげていくこと。HbA1cの値が高い患者さんは将来的に何らかの合併症を発症するリスクが高いと言われており、早期に対策を講じることが大切です。研究を通して多くの患者さんの健康が守られれば、こんなにうれしいことはありません。

埼玉医科大学 埼玉医科大学病院 小児科 武者 育麻 先生
2008年埼玉医科大学医学部卒業。小児科医として勤務する傍ら、2017年に同大学大学院医学研究科を修了。以来、小児糖尿病、遺伝性疾患、内分泌などの研究に取り組む。代表的な研究は「ヘモグロビン糖化の個人差に基づく糖尿病合併症リスク管理指標の開発」など。






