
救急医の技術と人間らしい心を尽くし、全力でPICU(小児集中治療室)の現場に立つ。
あらゆる状態の子どもたちに対応する、 PICUの医師として果たすべき3つの使命。
総合医療センターPICUで小児救急集中治療を担当しています。対応するのは内科的疾患に限らず交通事故や溺水・中毒など、さまざまな状態の子どもたちです。PICUが果たす使命は3つあります。まず1つ目は、全力で治療し、 全ての患者さんを元気にすること。しかし残念ながら、亡くなってしまう子はいます。このPICU の立ち上げ時に病棟の設計から関わり、外出できない子のために壁に青空を描いたり、家族と過こさせる個室を多く用意したりしました。どうしても治療ができず最期を迎えるときに、そんな安心できる空間で「がんばったね」と送ってあげたいのです。こ家族に落ち着いた気持ちでその時を迎えていただくことも大切だと考えています。これが2つ目の使命です。3つ目は臓器移植。移植は私たちが判定した瞬間、ドナーとなる子の命を絶つことになります。前述した2つの使命を理解しないと移植を行うべきか答えを出すことができません。もちろん移植は無い方がいい。でも、やらなければならない時には、やるべきだと思っています。
今、ここにある小さな命のために。
大人たちが連携して子どもたちを守る。
PICUは、搬送されてきた傷病者を集中治療するだけではなく、別の医療機関に移送する場合もあります。肺の移植手術のため、多くの医療人や鉄道関係者と連携し、患者さんを新幹線で移送したことがありました。その子は13年間ずっと病院にいて、息もほとんどできない状態。病状や容態はもちろん、現場の様子まで把握し、車内の限られたスペースで呼吸管理をしました。厳しい状況でしたが、最初で最後の思い出になるかもしれないと思い、「お母さんと一緒に富士山を見せてあげるよ」と声を掛け励まし続けました。無事に手術を成功させ、帰路でも富士山を見せてあげられたのは、搬送医学という「支える」医学のたまものだと思っています。患者さんやご家族に寄り添い、適切な医療につなぐことも大切な役割です。他にも災害時にぜんそくの子どもや妊婦さんなどの災害弱者と呼ばれる方々を救うため、埼玉県との連携を強化しています。少子化対策も大切ですが、同時に命を落とす子どもを減らさなくてはなりません。子どもたちは社会の一員として、元気に楽しく生きてほしいと願っています。
“埼玉医科大学ならでは”の魅力
教職員の温かいサポートと県内随一の病院施設が魅力
アドバイザーを務める教員や職員の方との交流を通じて、面倒見の良さを感じられる環境です。授業内では試験が頻繁に行われ、細かく理解度を確認してもらえます。この時学んだ病理生態学が、病態を点ではなく線や面として捉える力を養ってくれました。また、PICUは埼玉県下には2施設しかありません。外傷を含めた急性疾患に対応するのは当科のみで、唯一の環境で学べることも魅力です。

埼玉医科大学総合医療センター 小児科(小児救命救急センター) 長田 浩平 先生(2004年3月卒業)
大学卒業後、初期研修を経て埼玉医科大学総合医療センター小児科·ER科勤務。その後、数々の病院で小児科や救急科の経験を積み、 2016年より埼玉医科大学総合医療センター小児救命救急センター病棟医長に就任。カナダ留学を経て再び2020年より同センター病棟医長。