理解ある環境で臨床と研究を両立。免疫学研究の知見を感染症医療の現場に生かす。
免疫細胞に着目し、神経伝達物質の影響や感染症に対する反応を解き明かす。
体内に異物が侵入してきたとき、リンパ球などの免疫細胞が反応して免疫反応や炎症を起こします。この免疫反応に神経伝達物質が関与していると言われています。そこで、時として起こる過剰な炎症反応を制御する方法を探るべく、神経伝達物質が免疫細胞に与える影響について解析しています。また、昨今の社会的要請を踏まえ、新型コロナウイルス感染症患者の免疫応答の解析にも尽力。免疫応答とは、感染を防御する際の免疫細胞における反応を指しますが、このメカニズムを解き明かすことがより効果の高いワクチンの開発につながると考えています。これらの他にも、大学病院内で検出された病原性の微生物の遺伝子解析など、多様な研究を進めています。さまざまな研究活動に励む一方で、培った知見を生かしながら臨床医としても勤務。コロナ診療から院内の感染症対策まで、幅広い業務に取り組む毎日です。
課外学習プログラムへの参加を機に免疫学の面白さを知り、研究の道へ。
私は昔から実験が大好きで、高校生の頃は化学教師か医師になりたいと考えていました。最終的に医学部を志したのは、医療は多岐にわたる分野と関わりがあるため、研究テーマの選択肢も幅広そうだと感じたからです。現在の専門領域に行き着いたのは、大学3年次に課外学習プログラム「夏期プロ」で免疫学教室を選び、実験に参加したことがきっかけ。その時はスギとダニのアレルゲンに対する応答の解析を実施しました。もともと免疫学の授業でHLAという白血球の血液型が人によって違い、病原体に対する反応も異なることを知り興味があったのですが、同教室でその面白さを改めて実感。そこから本格的に免疫学研究の世界へ足を踏み入れました。
「研究医養成プログラム」を活用して学位に加え、専門医の受験資格も取得。
埼玉医科大学には「研究医養成プログラム」が用意されており、私はその1期生にあたります。医学部卒業と同時に大学院に進学し、研修医の業務終了後に講義を受けるなどして単位を修得。その後、内科専攻医として研修を積みながら基礎研究に励み、卒後4年目で医学博士、卒後5年目で内科専門医の受験資格を取得できました。忙しい日々ではありましたが、おかげで時間配分を工夫して効率的に動く力が身に付いたと感じます。現在所属している医学部免疫学と大学病院感染症科・感染制御科はどちらも研究が盛んで、臨床と研究の両立に対して理解がある素晴らしい環境です。今後も経験豊富な上司による手厚い指導の下、免疫学と感染症学の両分野にまたがる研究を推進していきます。
医師は一生学び続ける職業です。私は大学受験で身に付けた「学ぶ姿勢」のおかげで入学後の勉強がとても楽しく感じました。皆さんが受験生として経験することは将来必ず役に立つので、全力で頑張ってほしいと思います。
埼玉医科大学医学部免疫学 埼玉医科大学病院 感染症科・感染制御科 戸叶 美枝子 先生
2017年埼玉医科大学医学部卒業、2021年同大学大学院医学研究科修了。同年4月より免疫学分野で助教を務め、2022年から同大学病院の感染症科・感染制御科助教を兼担する。専門領域は免疫学や感染症学、感染制御学。